【合気道12/02】準備を大切に

クラス:合気道

日 時:2014年12月2日(火)・15時~17時

場 所:王子スポーツセンター柔道場

参加者:5名

 

内 容

  • 体操
  • 呼吸法
  • 鳥船
  • 四方切り
  • 足捌き
    • 送り足
    • 送ってから継ぎ足
    • 線を換える送り足

(休憩)

  • 受身・膝行
  • 体術
    • 逆半身片手取り転換6種
    • 逆半身片手取り歩み足転換
    • 逆半身片手取り入り身投げ
    • 逆半身片手取り四方投げ
    • 坐技呼吸法
  • 輪になって呼吸

 

雑 感

この日は天気予報ではかなり寒いと言っていたので、柔道場の中はさぞかし冷えるだろうと思ったのですが、そうでもありませんでした。

室温計を見てみると14度ありましたから、室温だけなら先週よりも高かったくらいです。

 

とはいえ、12月に入ってこれからもっと寒くなるでしょうから、参加される方は防寒対策をお忘れなく。

うちの道場での稽古に限って言えば、貼るカイロを懐に忍ばせていても、ヒートテックの肌着を着用していても構いません。

最初の準備体操の間だけなら、上着や靴下をつけていてもいいです(ただし、呼吸法以降は皮膚の感覚を外界に向かって開いていきたいので、上着の着用はご遠慮願います)。

 

今回私は仙骨(お尻の真ん中にある骨)あたりに使い捨てカイロをつけ、足袋を履いて指導してました。

そのことは道場で参加者にも言いましたし、「必要があればこういうことをなさってください」とお伝えしました。

冬の王子は冷えますし、今月から新しく始まる芦屋の柔道場も、せいぜい「王子よりはマシ」というだけで、「暖かい快適な稽古環境」とまでは言えません。

他にも西宮や尼崎などに柔道場のある施設は存在していますが、どこも冬場はやっぱり寒いです。

なので、畳のある柔道場で稽古するのが前提となる合気道クラスにおいては、自分の身を守って気持ちよくお稽古をするためにも、各自で防寒の工夫してもらいたいと思っています(ダメな場合には「それはダメです」とこちらから言いますので、ご相談ください)。

 

さて、今回は基本にかえって逆半身片手取りをやりました。

私自身、最近は発見が多くて、この日指導したこともまだまだ試している段階の部分がありました。

こういう新しい試みをするときには特にそうですが、それがどんな結果に終わるかイメージできていないと、生産的な実験になりません。

技をかけるときにもそうなのですが、「あ、この人にはかかるな」と思うとかかるし、「この人は受けを取ってくれないんじゃないか」と思うとかからない。

「できる」と思っているとできるし、「できない」と思っているとできない。

 

これはちょっと前に本で読んだ話なのですが、あるところに次々と金属製のスプーンをねじ曲げてしまう子供がいたのだそうです。

「どうしてそんなことができるの?」と大人達が聞くと、本人は「だって曲がる気がしたから」と答えたといいます。

でも、大人になっていくにしたがって、その子はスプーン曲げができなくなっていきました。

それはおそらく「スプーンが曲がるわけがない」という観念を深く身体化させてしまったからだと思いますが、こういう「できる気がして、やったらできた」という事例は、舞踊にも武道にも多くあります。

 

たとえば、バレエのターンをするときにも、本当に綺麗に何回転も回れるときには、準備動作の時点で「あ、回れる」とわかります。

これは私自身も何度か経験したことがあります。

それは「自分は回れる」と思い込もうとすることではないです。

回れるときにはただわかるんです。「ああ、自分は回れる」と。

 

それは私達が日常的に手に持ったコップやお皿を机に置くときなどに、「ちゃんと置けなかったらどうしよう…」と言って心配しないのと同じです。

「ああ、置ける」とわかって、そのようにしているだけです。

それと同じレベルで、「回れる」ということが前もってわかるんです。

 

「自分はこれだけ練習してきたのだから回れるはずだ」という風に言い聞かせるから回れるのではありません。

そんなことをしても、かえって失敗の可能性が心の中で肥大化してきてしまい、緊張のあまり自ら失敗を招き寄せてしまいます。

 

武道でも、たとえば弓術の世界では、「調子の良いときは的がこちらに近づいてくる」という表現をします。

演出家の故・竹内敏晴さんは若い頃に弓術をしていたときのことを語る中で、こう書いています。

 

確か十九歳の秋、私は絶好調であった。弓をいっぱいに引きしぼって、的にぴたっと狙う。狙うと的が非常に大きく見える。大きく見えるというのは、三十メートル先の的が三十メートル先で大きくなるのではない。ぐんと近づいてくる。反対にコンディションの悪いときは、的がはるか遠くに消えそうになって、どうしてもつかまえられない。狙えないことがある。この秋の絶好調のときには、ぴたっとからだがきまったとき、的に向かって弓を押している左手、つまり弓手が的の中に入っているように見えた。(…)これでは、はじめから矢先が的の中に入っているわけだから、これはまあ、外れっこない。事実こういうときには絶対外れない。

(竹内敏晴『ことばが劈(ひら)かれるとき』ちくま文庫、128ページ)

 

昔から、弓の名手は「的に当てようとして射るのではなく、的に当ててから手を放せ」と言います。

西洋のアーチェリーでは違うかもしれませんが、少なくとも日本の弓術では「撃ってから当てる」のではなく「当ててから撃て」と言われる。

つまり、「時間の順逆を転倒させろ」と指導されるのです。

 

これを合気道では「先を取る」という仕方で教わります。

いちかばちかで投げようとしないで、必ず「投げるための場」(これを称して「結界」と言います)を先に設定しておいてから相手をそこへ招き入れるよう言われる。

これはもう初心の頃から耳にたこができるほど言われることですが、実践しようとする人はあんまり多くありません。

それゆえ、誰かを招き入れる準備ができていないうちに、相手に入ってこられてしまって狼狽するということを多くの人が繰り返しています。

 

でも、それではダメなんです。

必ず「準備」をしてから技に入らねばなりません。

この「準備」を、どれだけ前もってやっておけるかに全てがかかっています。

たいていの人は、相手と向き合ってお辞儀をして、立ち上がって距離を詰めて、いざ腕を掴まれてから「準備」をしようとします。

でも、それではあまりに遅すぎる。

 

距離が詰まる前に、立つべき位置にしかるべき仕方で立っておく。

お辞儀をしている段階で相手のことをよく見ておく。

さらにいえば、向き合ってお辞儀をする前の段階で、自分の周囲にどんな人がいるかを肌で感じておく。

こうやって先手を打って「準備」をしておくだけで、相手の身体情報(重心がどこにあって、呼吸のリズムがどれくらいで、どこに歪みや弱点があるかなどなど)が、かなりの程度把握できます。

 

このような「相手の身体情報を取得する能力」は誰でも持っている力です。

人間だって生物なんだから、目の前の相手が自分より強いか弱いかを見た瞬間に把握する力くらい、持っていて当然です。そうでないと、生き残れませんから。

そして、そういう情報が前もって取得できているからこそ、実際に技に入る前から、「あ、この人は投げられる」ということがわかるんです。わかっているから、安心して自然体でいられるのです。

 

反対に、「この人は投げられなさそうだな」と思う場合、実際にやってみると投げることができません。

それは、「相手の身体が大きいから」とか「力がこちらより強そうだから」とか「向こうの方が経験が長いから」とか、頭であれこれ理由をつけて、最初から「きっと自分は失敗する」と決めてしまっているからです。

だから、やる前から「相手の身体情報を取得するための回路」も一緒にオフにしてしまう。

 

でも、きちんと相手を知ろうと思っていれば、知ることのできる情報はたくさんあります。

それらは身体の表層から漏れ出て、そこら中に漂っています。

ただし、武術の達人はこういった「内部情報」が簡単に漏洩しないような身体システムをすでに練り上げてあるので、ほとんど入り込む隙間がありません(この状態を指して「あの人は隙がない」と私達は言います)。

でも、たいていの場合、相手の身体情報はこちらが見ようと思えばちゃんと見えます。

あとは、その情報を元に、どう相手と関わっていくかです。

 

最近、凱風館で身体のことや技のことで後輩から質問を受ける機会が多くなったのですが、たまに、どういうことを質問したいのかが自分の中で明確になっていないまま聞きに来る人がいます。

こういった方は、「自分が何を知らないのか」を本当は知りたがっていません。

それでいて、「知らない」という事実には心のどこかで気づいていて、それを暴露されるのではないかと不安に駆られている。

あんまり不安なんで、誰でもいいから、とにかく誰かに「私は不安なんです」と告げたい。

でも、「不安なんです」とそのまま表出すると、「なんで不安なんですか?」と相手から問い返されて絶句することがわかっている。

だから、「これこれがわからないので教えてください」という風に先輩に質問するという形式を利用することで、本音を隠したまま不安だけリリースしようとするのです。

 

そういう気持ちって私はすごくよくわかるんですけれど、やっぱり人に物を聞くときには、自分が何を聞きたいのか、どうしてそれを知りたいのかを前もって自己点検した方が良いと思います。

そうでないと、生産的な質問はできないし、質問されたほうも答えられません。

 

私の教室に来る方は、技に入る前に面倒くさがらずに「準備」をする癖を、ぜひつけていただきたいと思っております。

防寒対策も含めて、ね?

 

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コメント: 2
  • #1

    KIM (水曜日, 03 12月 2014 18:25)

    今日も、読み応えがありました⭐︎
    最後の〆もステキです(^_^)

  • #2

    湯浅和海 (水曜日, 03 12月 2014 23:49)

    >KIMさん
    コメントありがとうございます。
    何ヶ月ぶりのコメントでしょうか(笑)
    またお稽古でもよろしくお願いします~。